やすくんのブログ

科学技術と社会、その他カルチャーなど。

倫敦留学記ー何を見てどういう世界に生きようとするのか

4月のブログさぼっていてすみません。月末は課題に追われていました。

あと、4月はマルタに旅行に行ったこと以外にとくに備忘録に残すこともなかったため、4/5月でまとめてしまおうと思って意図的に見送りました。これは戦略的なものであって決して僕の怠惰ではうわなにをするやめ

 

ということで、4/5月のハイライトです

  • すずめの戸締まりを観てきた
  • マルタ旅行とレンタカー会社とのビーフ
  • チャールズの戴冠
  • インスタント二郎という薬
  • ロンドンで初めてjob interviewを受けてインターンのオファーをもらった
  • OpenAIのCEOの話を聞きに行った

4月

すずめの戸締まりを観てきた

日本以外の公開は4/14だったようで、4/15にSouthbankのIMAXの映画館で観てきました。公開2日目で土曜日だったこともあり、割とお客さんの入りは良かったんじゃないかと思います。あんまりネタバレするのも良くないと思いますが、メインキャラが椅子になってしまった後のシュールさとかは外国人にも結構ウケていた一方、東日本大震災が主題であることを鑑みると被災者とそれ以外の地震経験者、全く地震のない地域に住んでいる人とで受け止め方が異なるだろうなと感じましたし、物語の設定を考慮すると震災で実際に親しい人を亡くした人が見ると非常に複雑な思いを抱くだろうなと思いましたね。

 

マルタ旅行とレンタカー会社とのビーフ

マルタに5日ほど行ってきました。ご飯もお酒も美味しくて海もきれいで天気にも恵まれて最高の旅でした。中でもバレッタ(マルタの首都)にあるピザ屋で食べたブッラータチーズのピザが人生で食べた中で一番美味しかったので、マルタに行く用のある人はぜひ食べてみてください。

goo.gl

マルタの路地。ほどよい生活感があって好き

 

この旅行の唯一の汚点はレンタカー会社との揉め事で、レンタカーのデポジット決済をめぐって1時間ほど口論になりました。その業者はなぜかクレカ決済しか受け付けておらず、イギリスに来てからデビットカードしか使っていなかった(そしてそれで全く問題なかった)僕と友達は大困惑。デビットカード決済であれば、業者の指定する保険に追加で加入しないといけないという謎規定を飲まざるを得ず、結局400ユーロ近く追加で支払う羽目になりました。そのうち200ポンドは返金されるはずなのですが、返金目安の日数が経過してもまだ戻ってこないため、今問い合わせをしているところです。ヨーロッパを旅行する際は変な格安業者ではなく、HertzやAvisといった名のある業者を使いましょう。

5月

チャールズの戴冠

あったね、そんなの。少なくとも僕のコースのイギリス人は全く冷めた目で見ていました。僕は記念にバッキンガム宮殿付近まで行きましたが、結局パレードを直接見ることは叶わず。いつか転売したら高値で売れることを期待して戴冠式の公式プログラムを2冊買って帰りました。

日本でどこまで報道があったのかは知りませんが、バッキンガム宮殿周辺では'Not My King'のプラカードをかかげて抗議する人たちが見られました。彼らの一部が、事前にデモの申請をしていたにも関わらず、警察に逮捕されたとかなんとかで戴冠式直後は話題になっていましたが、喉元過ぎれば熱さを忘れるというやつですね。

www.theguardian.com

インスタント二郎という薬

二郎ラーメンがどうしても食べたくなり、一日の3割くらいは二郎で頭がいっぱいになってしまったので、イギリスで二郎を作る方法を調べました。

melonpandax.hatenablog.com

 

面倒くさすぎる。手軽に二郎を食えんのか。

豚骨を煮込んでスープを作るとか製麺するとかそういった面倒くさいことはしたくないけど二郎は食べたいというランプの魔人に言ったら怒られそうな願いを叶えてくれるものはないかと思いYoutubeを眺めていたところついに発見。

youtu.be

リュウジさんありがとう。袋麺で二郎っぽいものを作ってみることにしました。

(袋麺で二郎とか認めん。オーションを用意しろという方は口を挟まないでください)

見た目は完全に二郎。食べごたえもあって◎

反省点はチャーシューに味が染みていなかったこと。次回は半日肉を漬け込んでからやります。これが1杯あたり5ポンド弱で作れるのはとても大きい。

ロンドンのインターンシップについて

色々ありロンドン就職は難しそうなのですが(就職しても1人で生計を立てられるほどのお金を稼ぐのが難しい)、2週間ほど元々の第一志望だった企業でインターンシップの機会をいただけることになりました。7月末ごろから受け入れてもらえないか交渉中です。ロンドンでインターンをやる機会はたぶん人生で二度とないのでめっちゃ楽しんでこようと思います。

その企業は主にクライアントの危機対応(IRとかPRとかクライシスコミュニケーションとか諸々)のコンサルティングをやっている企業で、日本ではあまりそうした企業を目にしないため、今回インターンの機会をもらえたのはとてもありがたいことだなと感じています。2, 3年職務経験積んだら中途採用でジョインを狙うかもしれないので、職場の雰囲気等も含めて色々学びたい所存。

OpenAIのCEOがUCLに来た話

www.ucl.ac.uk

ChatGPTやDALLE2でおなじみのOpenAIのCEO Sam AltmanがUCLに来るということで講演を聞きに行ってきました。トーク内容は以下のようなものでした。

  • Samがこれまで訪れてきた国々の反響(EUとGlobal Southでどのようにテクノロジーの受け止め方が異なったのか。GSの方がhealthやinnovationといった直接的に社会に影響の大きい分野の関心が高かったとかなんとか)
  • GPT-5の開発の現状。お察しの通り時間はかかるだろうとのこと。LLMがもたらす"the next paradigm"がどのようなものであるかに関心があるらしい
  • ChatGPTとmisinformation/disinformationの関係性。結局ユーザーの使い方次第であると言っていて、この回答には随分モヤモヤした。開発者の責任については言及がなかったように記憶している。
  • AI規制とテクノロジーの発展について。陳腐な回答だが、バランスが重要だろうとのこと。
  • APIやthird-partyに関するOpenAIの戦略について。特にこれらを規制することなく、一緒に分野を盛り上げていきたい。

講演後に同じ学科(STS)の同期とビール飲みながら感想戦やってたのですが、「退屈だった」「モデレーターが現状追認ばかりで全く批判的でなかった」「Samの言いたいことを言って、かつUCLというグローバルで名声のある大学で講演をしたという実績作りにはなった。強かだと思う」「UCLの方もSamを連れてくることが対外アピールになったのではないか」などなど批判的な意見が出ました。僕も全くその通りだと思います。フロアの席の1/3は関係者席で予め埋められていましたし、パネルディスカッションの際の質問の8割は関係者席からのもので、非常に「答えやすい」質問ばかりでした。一部答えづらそうな質問もあり、「社会はテクノロジーを正しく使ってくれると信じているか?」という質問は面白いなと感じました。彼の返答は"I am very optimistic"だったように思います(うろ覚え)。ただ、全体としては用意されたシナリオを淡々とこなしていくイベントに過ぎないように思えました。まあ、話聞けただけでもありがたいわけですが。

講演後にフロアの質問に応じるSam(中央右)。
質問できたのは一部の関係者だけだったと思うが。

Samの講演のときには、会場の外で生成系AIの開発に抗議する人たちが集まり、シュプレヒコールを上げていました。彼らの配布したビラには「誰の利益のために生成系AIは開発されているのか?」「すべての人類の利益になるシステムを作ると言っておきながら、ケニア人の労働者を時給2ドルでこきつかい、なおかつ児童ポルノや獣姦、殺人、自殺、拷問、自傷、近親相姦といった状況を描写したコンテンツに晒したではないか」「なぜトレーニングデータを公開しようとしないのか?自分の個人データが使われていないと確かめられるのか?」などなど多岐にわたる論点が載せられていました。

time.com

こうした批判の中には、エンジニアや研究者から見るとちゃんちゃらおかしいものも混じっているのかもしれません(僕は詳しくわからないのですが)。ですが、抗議の声を上げる人びとにとっては非常に重要な論点であり、それを「取るに足りないもの」として一笑に伏すこともできましょうし、全く無視することもできるでしょう。「テクノロジーの進歩を妨げる愚か者である」というふうに言うこともできるでしょう。実際にOpenAIの人たちがそう思っているかどうかはわかりませんし、エンジニアや研究者が全くのテクノロジー礼賛でsolutionism的思考に陥っていると言いたいわけでもありません。この点は強調しておきます。しかし、テクノロジーの開発や支援において、誰の利益が優先されるのか、利益に優先順位をつけられる人たちはテクノロジーや社会に何を見ているのか、テクノロジーが社会にどういった望ましい影響と悪しき影響をもたらしうるのかというトピックは非常に重要なものだと僕は考えていますし、ときにそうした点は曖昧になりがちなのではないかと危惧しています。すべての批判に応えることは難しくとも、せめてこうした問いに対してどのような解を与えうるのか、そして今後どのように向き合い続けていくのかという点について、開発する人たち・政府を含めて支援する人たちはより明確な答えを与えることが必要なんじゃないかと思っています。じゃあどうやって開発の現場と折り合いをつけていくのか?という点については…あと数年で暫定解を見つけたいところです。少し前に誰かに言った気がしますが、「社会における別解をデザインしたい」という自分の思いはこういった部分に表れているように感じます。

 

余談;現実における別解を探す話で言えば、サマータイムレンダというアニメがとても面白かったのでお時間ある際に見てみてください。タイムリープ×サスペンスって感じです。

summertime-anime.com

なんだかんだロンドン生活もあと3ヶ月で終わりそう。Dissertationと格闘しながら、楽しくやっていきましょう。日本に帰ったらみなさんまたよろしくお願いします。

最後はイギリス伝統料理、うなぎのゼリー。飯テロ。